深部310km地点

変に明るく、変に暗い

10. 森

高層ビルが刺さった街に降り立った。500 kmのビル、200 kmのビル、最も高くて820 kmらしい。ビルに見下される。目を合わせられないほどの高さであるはずなのに。壁の全てに目がある。どこにいても見下される。私は耐えられず地面を掘り、高層ビルの鉄骨から破壊して、小さいビルにしようとした。問題は根本的な原因を見つけ出し解決するのが良い。私は破壊の手段として鉄を食べるタイプのシロアリを集め、ビルの鉄骨に住まわせた。この方法はかなり有効で、しかも私は待つだけである。第四の欲求、楽をすること。コンクリートを飲んで待っていると、私と同じ大きさのシロアリは私をサボっている仲間だと勘違いをし、鉄を食べろと催促してくる。私は、生まれつき鉄アレルギーで、鉄を食べると胃が荒れてしまうと伝えた。シロアリは、私の飲んでいたコンクリを横目に不服そうに鉄を食べる仕事に戻った。私より小さいシロアリは、私を慕い、私に従う。アリの習性である。小さいシロアリは、ビルの鉄骨に鉄ではない部分があると報告してきた。私は小さいシロアリに案内してもらい現場に向かった。鉄ではない部分はゴム製であった。しかし、鉄骨と鉄骨を繋げた部分がそれであり、地中にゴムだけ残っていても環境面以外ではそれほど問題ではない。そう伝え、今まで通り鉄を食べてもらうことにした。私は油断していた。鉄骨の大部分を占める鉄さえ無くなれば、後は崩壊するのみだとばかり考えていた。鉄とゴムのそれぞれの機能すら知らずに。地中に残されたゴムは、30分に1回の頻度で新しい鉄骨を2.5 cm、四方八方に伸ばす。2時間で直径20 cm近くの鉄ゴム製ウニに変貌してしまうのだ。こうなると話は変わってくる。問題の解決は根本的原因の究明である。私は鉄を食べるシロアリに加えてゴムを食べるゾウを呼び出した。鉄骨の元を断つためゴムをゾウに食べてもらうわけだが、ゾウは鉄を食べられない。シロアリがゴムの周りの鉄を食べてから30分以内にゾウにゴムを食べてもらう作戦を考え、決行した。ところが、ゴムを食べたゾウは突然死んでしまった。実験中の犠牲者である。ゾウの死体を眺めていると、死体から私より少し小さいゾウムシが現れた。あ。私は小さいゾウムシにすぐさま最高級の命令を下した。