深部310km地点

変に明るく、変に暗い

2022-01-01から1年間の記事一覧

26. 現在地不定条約

現在地が分からない。私は一体どこにいる?どこへ向かっている?何も分からない。ただ光に照らされた方へ歩いてみたかと思えば、照らされた光によってできた影に逃げるように駆け込む。これを延々と繰り返す。完全に光に支配されている。偶発的な出来事と、…

25. IMGEHIRN 002

「小さい頃から、私は自分の家族があんまり好きじゃなかった。可愛がられなかった訳でもないんだが、なんというか、お互いの間に透明の膜が張られているような感じなんだ。触れられているのに、よく見ると、mm単位で見ると触れていない感じなんだよ。でも他…

24. IMGEHIRN 001

「ほら、私に謝罪してよ」 「何…?急に…」 「この間のことだよ!あんた急に私との約束をほっぽって今日の今日まで何も言ってこない。おかしくない?流石に怒っちゃうよ。」 「あ…あれは連絡を入れたつもりが送信されてなくて…それに少し前に最近忙しくて疲れ…

23. カエルせんべい

今朝、道を歩いていると、曲がり角から女の子が泣きながら歩いて出てきた。友達関係か何かだろうか。安直に予想しながら女の子が出てきた角を曲がると、そこには車に轢き潰されたヒキガエルの無惨な姿があった。腸が露出しており、車の進行方向に合わせて赤…

22. モグラ

自分で言うのも何だが、私は大人しくしていればそこそこの人生を送っていたと思うんですよ。普通に、周りに合わせて、何も余計な事は考えずに。この、”何も考えずに“という点が私にとって問題だったのだ。何も考えずに身の回りの出来事が起こり、終わり、進…

21.飛んで音に入る

一人旅初日。本日は雨。折角の旅行だがあまり遠くに行くのも億劫なのでホテルの部屋で微睡んでいたところ、窓の外から突然かなり好みの格好いい曲が聴こえてきた。アルトサックスと金管楽器の音。吹奏楽部か?と思い近くに学校があるか調べるも見当たらず。…

20.イチゴ味の憂鬱

午前2時、私は私の死体と対話する。布団に包まったまま、まだほのかに温もりが残る肉塊と私は一部屋を共有し、隣に座ったり、寄りかかったりしている。ひょっとしたらまだ生きてるかも…と布団を退かし瞼を開けてみるが、瞳孔は開きっぱなしだ。私とそっくり…

19.腐敗ガス中毒

社会の例に倣い職探しをしていた。流れに身を任せすぎた結果そうなってしまった。しまった。私は将来的には仕事に就いて安定した収入を得たいが、職探しにおける私にとっての適正時期が世間とズレていると常々感じていた。何においても、適正時期でないとや…

18.水棲哺乳綱ヒト科

今日の仕事が終わった。定時とともに足早にずらかる。ここの空気は最悪だ。ドブを啜ったような味がする。私の通勤手段は自家用ミニヘリコプター。身体の大きさギリギリに設計しており、搭乗した重みを感知して自動操縦により自宅へと導かれる。玄関は屋上だ…